ケーススタディ
Japan Property OS
日本の不動産購入を支援する意思決定サポート。
創業者 / プロダクトリード
日本の不動産を探している外国人にとって、物件情報自体を見つけることは難しくない。難しいのは、その物件が自分の状況に本当に合っているかを判断すること — このプロダクトは、その差分を埋めるために作られている。実際に稼働しているプロダクトであり、創業者兼プロダクトリードとして、課題定義からAIを活用した実装、テスト、リリースまでを一貫して担っている。
ライブプロダクトを見る ↗課題
日本の住宅不動産に関心を持つ外国人 — 賃貸投資を目的とする層や、空き家(放置された空き物件)に個人利用として惹かれる層など — にとって、物件情報を見つけること自体は難しくない。断片化しているのはその先だ。自身の資金計画や個人的な基準に照らして物件を評価すること、自国の購入プロセスとは異なる法務・建物・周辺環境などのデューデリジェンスを整理すること、仲介業者や弁護士とのやり取りを記録すること、そしてその物件が本当に追求する価値があるかを判断すること。こうした情報は、物件情報・PDF・メールのやり取り・記憶の中に散らばりがちだ。
このプロダクトの機会は、新たな物件情報マーケットプレイスをつくることではない。Japan Property OS自身のポジショニングが端的に示している:「We don't list akiya. We help you decide.(空き家を紹介するのではなく、意思決定を支援する)」。意思決定支援と購入ワークフローのためのプロダクトである。
プロダクト
Japan Property OSは、マーケットプレイスではなく意思決定支援のためのワークスペースである。購入者はすでに見つけた物件をアプリに登録し、Tracking、Interested、Under Contract、Purchasedといった構造化されたパイプラインで各物件を管理する。プロダクトは意思決定を軸にすべてを整理する — 詳細な物件プロファイル、財務分析(利回り、キャッシュフロー、ROI、損益分岐点)、日本特有の懸念事項に対応した10カテゴリのデューデリジェンス・チェックリスト、ドキュメント、メモ、そして購入に関わる仲介業者・弁護士・検査担当者と紐づいた質問管理機能を備えている。

Readiness Score から Suitability Score へ

初期のAcquisition Readiness Score(買付準備度スコア)は、チェックリストの完了率という決定論的なモデルを採用していた。プロダクトが進化する中で、この方式では購入者一人ひとりの目的に本当に合っているかを捉えるには硬直的すぎると分かった。
そこでSuitability Score(適合度スコア)に置き換えた。購入者自身の基準に照らして物件を評価し、パーソナライズされた根拠を提示する仕組みだ。LLMを用いて、購入者が示した基準を特定の物件に照らして推論し、スコア、平易な言葉での根拠、そして「地域のゾーニング規制を確認する」「短期賃貸の可否を確認する」といった、購入者がそのまま行動に移せる具体的なフラグを返す。
プロダクト設計における判断
単なるリストではなく、パイプラインと比較ビュー
物件はTracking、Interested、Under Contract、Purchasedといった明示的なパイプラインを進んでいく。購入者が複数の候補を比較検討する段階になると、利回り・価格・広さ・駅からの距離など、実際の購入判断を左右する数値を横並びで比較できるビューを提供する。本来のトレードオフ判断は、別々のタブから手作業で組み立て直す必要があってはならない。

汎用テンプレートではなく、日本仕様のデューデリジェンス・チェックリスト
法務、建物、賃貸、周辺環境、自治体、インフラ、保険、地震リスク、水害リスク、空き家特有の懸念事項という10の構造化されたカテゴリに、耐震基準の年代区分や民泊規制といった日本の不動産特有の実態を踏まえた項目をあらかじめ用意している。購入者は独自の項目を追加できるが、コアとなるチェックリストは他市場向けの汎用的なホームインスペクションリストの流用ではなく、実際のドメインリサーチに基づいている。

すべての未解決の質問を、記録し追跡可能に
国境と言語をまたぐ取引では、仲介業者・弁護士・検査担当者への未解決の質問が数多く発生する。質問管理機能は、それぞれの質問を担当者と物件に紐づけ、ステータスとフォローアップ日を記録する。多くの購入者が自力で取引を進める際にデフォルトとなっている、メールのやり取りとスプレッドシートによる管理を置き換えるものだ。

意図的にAIを活用して構築する
Japan Property OSは、開発の全工程でAI活用型の開発ツールを用いて構築されている — これは意図的なものであり、隠すことではなく、はっきり示すべき事実だ。自分の役割は、どのプロダクトをリードする場合とも変わらない:課題を定義し、要件と受け入れ基準を定め、アーキテクチャとプロダクトのトレードオフを判断し、実装内容をレビューし、何をリリースするかを決める。AI活用型のツールが変えたのは、意思決定がどれだけ速く動くソフトウェアになるかという速度であり、誰が意思決定を行うかではない。
品質という、プロダクト要件
プロダクトには実質的なテスト規律がある:ユニットテスト、インテグレーションテスト、E2Eテストによる自動カバレッジを備え、変更のたびにCI(継続的インテグレーション)を実行。さらに、100件を超えるアーキテクチャ・プロダクト判断を記録した意思決定の記録により、一人がすべての判断を記憶している状態を超えても、その背景にある理由を追跡できる状態を保っている。
現在の状況
Japan Property OSは稼働中で、実際に機能しており、継続的に開発が進んでいる — 完成した企業ではなく、正真正銘の初期段階にあるプロダクトだ。1件目の物件は無料、複数物件を管理する購入者向けに有料プランを用意する形で設計されている。中核となる購入ワークフローは今日も実際に稼働しており、ここで伝えたいのはその背景にあるプロダクト判断と実行力だ。
このプロダクトが示すもの
曖昧な課題を、実際のプロダクトへと構造化する力。プロダクトとシステムのトレードオフを判断し、その結果に向き合う力。意思決定と検証を自らの手に保ちながら、AI活用型の開発を使いこなす力。そして、机上で設計するだけでなく、実際に稼働するプロダクトをエンドツーエンドで運用する力。